Ask518のブログ

田舎大工の現場での思い付きや日常

刃物を研ぐ

本日はかたさん様のブログを見てネタを拝借。m(_ _)m

職業訓練校に入り大工になるまでの間、その時お世話になったT先生。
もうかなり前にお亡くなりになりました。

先日チームA親方(私とは別チーム)と元請け会社倉庫にて、加工が一緒になった時に、たまたまそのT先生の話になりました。
話を進めてるとその親方もT先生に教わったとの話に。
今から40年以上前だそうです。
私が教わった時、T先生は定年間際でした。
ひとクラス10人程しかいませんでしたが、その内大工になるのは私一人。
座学以外は1人で別授業でした。
T先生は時間のある限り刃物を研ぐこと、それ以外の時間はホゾ穴掘り、アリカマの墨付け、刻みをとにかく繰り返すようにと。
無論、手鋸と鑿だけ。
たまに追っ掛け、金輪を。

飽きずに良くやったもんだと。(笑)
どれだけやったかは見当もつきませんが、この時間が今の自分の土台になっていると思います。

それから弟子入りし、小僧らしい時期(笑)を過ごし、本格的に研ぎにはまるまでやや掛かります。
墨付け刻みの会社でしたが、仕上げ材は塗装必須でしたので全てサンダー仕上げ。
手鉋の出番は面取りくらい。
鑿は刻みがあるので頻繁に研いでましたが、今思うと怪しいもんです。

墨付けを任せられるようになり、伏せ図、構造を預けられ、設計屋との打ち合わせも自分でやるようになりました。
この頃になると大工組合だとか技能組合に顔を出すようになり、その時の技能部長と懇意にして頂き競技会や技能試験の勉強会に参加するように。

それから隣町の古〜い金物屋を知り、通うようになります。
顔馴染みになり高〜い寸四ダメ切り鑿を清水の舞台から飛び降りたつもりで買った時でした…。
研げなかったんです。(笑)
頭の中は⁇でした。
それなりに研ぎはやってきたつもりでしたが、全然ダメだった事に気付くのに2〜3日掛かったと思います。

それからは早かったと思いますが、2ヶ月程で砥石をかなーり買いました。
失敗した石もありますがこの時は本当に勉強になりました。
金属の種類、打ち方で全く性質が違う刃物を研ぎ倒し、砥石の平面保持、管理、研ぎ方、石の好みも激しく変わりました。
その頃に知り合った宮大工の方が削ろう会に参加していて、かなりマニアックなところまで教えて頂いたのも大きいです。


それからしばらくして、その会社を辞め休業期間を経て震災後の岩手宮城へ。
この頃は研ぎとは無縁に近い生活に。
そんな生活に疲れた頃、以前お付き合いのあった今の元請け会社に。

細工物や家具作りが多いので鑿も鉋もそれなりに出番があります。
どんなに替刃の鑿、鉋が便利だとしても中々買う気は起きません。
砥石を準備して、研ぎ上げて、仕上がった刃物を持って現場に行く…という儀式のような日々が今の自分を支えてくれてたのかも知れません。

今の会社に来て、お世話になったT先生の話をできる相手がいたとは…。
世の中意外と狭いもんです。m(_ _)m